「もう遅いから帰れよ」
「どうして?」
「遅いからって言ったろ!」
「もう日が暮れてるからね」
「だったら………」

ううん、と彼女は首を振る。
その動作一つ一つに目が奪われる。

「私もさ、帰りたいんだよ。でも生憎様。放っておけない子がいてね、その子が帰るまで帰れないんだ」

「………そいつだって、お前が帰れば、」


「もう、分かってるんでしょ?」


ぎゅっと、汗で滲んだ手を握りしめる。
そうだよ、分かってるよ。

「帰らない」
「ほらね、君は私に帰って欲しくなんてないんだ」