トントントントン…



包丁とまな板の軽快なリズムが部屋に響く。




…うぅ~ん


…甘い匂い




春になってから毎朝、

目が覚めると、決まってこの匂い。

甘い甘い、苺の香り。

私の大好きな、苺の香り。





「いちごー?起きなさーい」
ガチャッ‥お母さんがわたしの部屋のドアを開く。 





「おはようお母さん」

「あらいちご、起きてたの?ごめんね」





"朝ごはん出来てるからね"と部屋を出ていくお母さん。






薄いピンク色のパジャマから、
学校の茶色のシックな制服に着替える。





髪はポニーテールに。
栗色でほんのりウェーブがかった髪は、わたしの唯一の自慢。



だってこの髪は。

この髪は。



あの人が褒めてくれた。
あの人が…