昼休みが終わり私は教室に戻った。
 5限目の授業は国語だ。
 しかし私は国語の教科書を家に忘れた。

「あ!」

 思わず大声を出してしまった。
 仙堂先生が私をみる。

「どうした?突川」
「いえー…そのぅ…非常に言いにくのですが…教科書を忘れて……」

 どうしようもないほどの情けない声が口から出た。

「じゃあ、隣の席の磯浪に見せてもらえ」
「は、はい…ごめん磯浪さん、教科書見せてくれる…?」
「え、あ、はい!いいですよ」
「ありがとう…!」

 泣きそうになった。
 私は磯浪さんと机をくっ付けて5限目の授業を何とか乗り切った。
 磯浪さんには、お礼をしてもし足りないくらいお礼をした。磯浪さんは笑って「いいよ、そんなこと」なんて遠慮気味に言ってくれた。

     *
 
 磯浪さんと私の関係はこの時こうして作られた。それからは携帯の番号やメアドなんかを交換して何度も遊びにいったりした。

 磯浪さんは私に言った。

「私達、親友だよね。春ちゃん」
「うん!いっちゃん」
「じゃあ、これから何があっても、お互い恨みっこなしね」

 可愛い声で言われた。
 私は何の事を言われてるのかこの時はさっぱり気付かなかった。
 だからつい

「うん!」

 なんて軽い口調で返事をしてしまった。
 そして私達は運命の中3になった。