―1月6日―
 
 短かった中学最後の冬休みが終わり、3学期が始まった。
 それと同時に進路のことを仙堂先生に相談した。
 仙堂先生は私の要求を親身になって聞いてくれた。

「じゃあ、突川は地方の私立で音楽に力を注いでいる高校に行きたいんだな?」
「はい!」
「それも白鳥河以外の」
「はい」
「いいのか?それで」
「いいんです。挑戦してみたいんです!誰も私の事を知ってる人が居ない場所で」
「まるで白鳥河には知り合いがいるみたいな言い方だが、まあいいか。分かったよ、探しておくよ。でもお前も自分で探しておけよ。学校のパソコン使ってもいいから」
「はい!ありがとうございました」

 私はこの事を有希と麻里に報告した。
 すると二人は

「いいんじゃない」
「よかったね」

 と言ってくれた。あっさりした物言いだが、何ともらしくて笑ってしまった。
 そして私自身も学校のパソコンを借りていろいろ調べた結果、一つだけ見付けた。

 埼玉県私立才星院高校
 偏差値66%
 寮完備
 男女共学
 生徒数1年96人・2年96人・3年96人=合計288人
 制服はブレザータイプで色は落ち着いたブルー。リボンの色は全学年が同じ紺と統一されている。男子はネクタイタイプ。
 学校としてのウィークポイントは音楽系クラブ、特に合唱部と吹奏楽部が看板となっている。もちろんその他にも、文化系やスポーツ系、芸術系クラブが名を連ねる。
 
 ということだった。
 私はこの情報を印刷して仙堂先生に相談してみた。

「才星院か…よく見付けたな、こんな所」
「どうでしょうか…?」
「別にいいと思うけど、埼玉って結構田舎だけどそこら辺大丈夫か?」
「寮もあるみたいですし」
「…分かった、一応資料請求しとくか?」
「いいんですか?」
「タダだしな」
「ありがとうございます」
「それで親御さんともう一度話し合え、それが終わったら3者面談やるから」
「そこまで見て頂かなくても…」
「それが私の仕事だし、しっかり送り出したいんだよ。自分の受け持った生徒くらいは」
「…分かりました。じゃあ、これから卒業までお世話になります!!」
「おう」

 先生は笑顔だ。
 私は恵まれている。
 こんなにも親身になって相談を乗ってくれる先生や私の事を心配してくれる友人や親がいる。そして磯浪さんや陽平と一緒になっても、もう全然平気だった。以前の私ならきっと家に引き籠っていただろうが。それはきっと有希と麻里のおかげだ。あの日の夜のカレーな出来事がなければ私は一生立ち直れなかったに違いない。その時、私は誓った。あの二人が困ったり、悩んだりした時は私が助けてあげようと。

 そして私は学校での事を両親に報告した。
 埼玉の学校という事で少し心配していたが、私が「どうしても」というと納得してくれた。そして先生に連絡しると資料が3日後に届くからその時に3者面談しようということになった。