時刻は5時45分。

 確かに待ち合わせ場所の岬公園には、陽平が先にいた。

「陽平!」

 私が叫ぶと、陽平が手を挙げた。

「よう。悪かったな、忙しいのに呼び出して」
「そ、そんなことないわよ!大体、元々は私が先に言ってたんだし!?」
「え?そんなこと言ったか?お前」
「…………」

 絶句した。
 分かっていたことだったが、この返事はさすがにショックだった。
 それでも私は気丈に振る舞う。

「言ったわよ!全く。で?何で私を呼び出したのよ?いっちゃんまで使って」
「ああ、それは…」
「わたしから言うよ、陽平くん」

 その時、初めて私は何かオカシイことに気付いた。何だろう、この空気…

 何か、私、すっごくヤバい気がする…。

 しかしもう遅い。
 磯浪さんは私の手をいつの間にか放していて陽平の隣へいった。
 そして彼女は笑顔でこういった。

「ねえ、春ちゃん。わたしたち、親友だよね。だったら、何があっても恨みっこなしね!?」

 その言葉は以前彼女が言った言葉だ。

「じゃあ、改めていうね」

 言わなくていい…。

「わたしたち…」
 
 聞きたくない……!!

「付き合ってます!」

 その時、麻里の言葉が蘇えった。
 あの時、いってくれた友人の忠告を今更思い出した。
 彼女は笑っている。
 とても無邪気に悪気のない笑顔で純粋に笑っている。

 ああ…なんで……どうして…こうなったんだろう…
 私はもう目の前が見えない。
 視界は涙でいっぱいだ。
 私は思わず走り出した。