季節はまだ冬。

あたし、尾田杏奈はそんな時期にこの学校に転校してきた。


緊張、不安。

降ってくる雪が、その感情を強くさせる。


また同じことになんないようにしなきゃ。


杏奈)ここかぁ…


ほぅと白いため息をつく。



あ、そだ。お母さんに着いたら写真撮ってきてって言われたんだった。


ケータイ、ケータイっと…


がさごそとカバンをあさって、ケータイを手にする。


カシャ



杏奈)うーん。こんなもんでいいかっ!


あたしはケータイをカバンにしまおうとした。


その時、



がさっ



))ニャアッ!



!???!!ねこ?!?!?


なんで猫がここにいんのっ…?


呆然と立ち尽くすあたしに猫が襲いかかる。


杏奈)ひゃあっ!


ばっ!





猫はダッシュで走ってどこかに行ってしまった。




杏奈)ケ、ケータイ取られた…。



その猫の口にはケータイがくわえられていたのだ。




ど、どーーしよ。

とりあえず、猫探さなきゃ。



あたしは猫のいる方向に走って行った。



杏奈)猫ちゃーーんっどこにいるのー?出ておいでー



辺りを見回してみるけど、猫の姿はない。


杏奈)はぁ〜…。どうしよう…。転校してきて早々遅刻とか最悪…。




))ニャァー




んっ!今、猫の声がした!!

あたしは猫の声が聞こえた方へ走って行った。


))ニャァー




いた!この猫だ!!


ん…?え…この猫、ケータイ持ってない!!

どっかに落としたのか!あぁ…もう最悪。

転校してきて早々ついてなさすぎる。



杏奈)仕方ない…。探すしかないよな…。



あたしは校内の辺りを探し出した。












ない。全く見つからない。


今は8時。8時15分には職員室にいなきゃならないのに。


通学してくる人たちがこっちに視線を向けてるのは分かっていたが、そんなことよりもケータイが第一だ。






8時10分。


もう登校してくる人も少なくなってきた。

やばい。あと5分だ。

全く見つかる気がしない。



あー…なんか涙出てきた…。

どーしよう…。





誰か、助けて…。





))何してんの?


突然、後ろから声をかけられた。


振り返るとそこにはあたしよりひと回り背の高い男子がいた。



男子)えっ!泣いてる!?


あ、やば、あたし今泣いてたんだった…。


急いで涙を制服の袖で拭く。



杏奈)ケ、ケータイ、なくしちゃって…。


男子)ケータイ!?!?

杏奈)はい…。

男子)おら、何ぼーっとしてんだ!さっさと探すぞ!


え…?一緒に探してくれるの…?


杏奈)いや、でもあなた、授業が…。



男子)いーんだよ。人が困ってんのに、見捨てられっかよ。



なんなんだろう、この人…。



ー名前も学年も知らないのにー