「…麗奈？」


ふと呼ばれて顔を上げた。


「やっぱり麗奈じゃん！」

そう言って
私の前に走ってきたのは…


「私！！私だよ！
香澄だよ！！」


名前を言われて驚いた。

高校時代に一瞬だが
仲良くつるんでいた友達。


「麗奈だああ！
やだ懐かしい！
綺麗になっちゃって！」


まるで芸能人でも
見つけたかのような香澄の
異常なまでの喜び方にも
疲れ切った私の体と心は
ついていけなかった。


「久しぶり…」


消え入りそうな声で
一言言葉を発して
私はまた俯いた。


「なに泣いちゃってるの？
気持ち悪いの？」


香澄もしゃがみこんで
私の背中をさすってくれた。


「…違う」


喋れば涙が込み上げる。


「…何か辛いの？
麗奈、私の店行こう！
話聞くからさ」


私の両頬をつかんで
香澄は無理矢理
顔を上げさせて笑った。