「…ごめんね」


ガラガラの声で
そう言った私の左手を
弘毅は強く握って
優しく微笑んで頷いた。

弘毅は何も知らない。

今まであったことを…

要と私の間にあった事を
弘毅は何も知らないから
そうやって優しく
笑いかける事ができるんだ。

裏切っていたのに…

弘毅、あなたの女は
あなたを裏切っていたのに。


「怜、保育園は…?」
「おかあ!」


怜はとんでもなく
嬉しそうな顔で私の頬に
触れてきた。

ごめんね。

お母さん、おかしいね。


「おとう、がたんごとん
あっち、あっち
れえたんところよ!!」


片言で怜が弘毅が
来たときのことを
一生懸命伝えてくれた。

怜は弘毅のことを
『おとう』と呼ぶ。