その老人は大きな目玉をこちらに向けて、言った。
「わしはあんたが羨ましいよ。」

暫くしてから続けた。
「そう言って欲しいのだろう?」

そして最後に、一言。
「そんな事はどうでもいい事だ。そう思わんかね?」

私は、そうは思わなかったが、少し考えるような仕草をしてから「そうかもしれませんね」と言った。

老人はいつの間にか、目を閉じて、静かに椅子にもたれかかっていた。

私は、夏の空を見上げ、大きな雲が動いている事を確認してから、アイスティーをつくりにキッチンへ歩き始めた。