会いたいって言うのも、どこかに行こうって言うのも、今まで全部柚仁からだった。
だから透から
「来週の土曜、映画観に行こう」
そんなメッセージが届いた時、柚仁は飛び上がるほど嬉しかったのだ。
透もきちんと私のことを考えてくれていた。見たい映画が見つかった時、一緒に連れて行きたいって思ってくれたのは私だった。
そんなことが嬉しくて。胸が踊った。
透は気づいていなかったみたいだけど、知ってた?土曜日は記念日だったんだよ。6ヶ月の。半年だよ?
「半年」ってどれほどの重みなのだろう。少なくとも柚仁の中では大きなものであった。
柚仁は、透はそれを知っていて誘ってくれたのだと思っていた。
でも違った。無駄な期待を抱いた自分が悪かった。透がそんな気の利いたこと、できるわけがなかった。
そもそも、透にとっては「記念日」なんて存在していないのかもしれない。
「半年」なんて、透はなにも考えず意識せず過ごして来たのかもしれない。
毎月、今日は記念日、とささやかながらも喜んでいたのは柚仁だけで。祝ってくれたのも柚仁の周りだけで。
そうだ。
柚仁は大切なことを忘れていた。
6ヶ月前のあの日。
私は透の「彼女」にはなったけれど、「恋人」にはなっていなかったのだーーーー。


