「唯香、今の隙に奪っちゃえば〜?」
「え〜、無理だよ〜」
洒落にならない冗談を言い合う2人。こいつらは一体何がしたいのだろう。挑発でもしてるつもりだろうか。
柚仁は全く気にしない振りをして、おもむろに手元に置かれていたスマホのホームボタンを押してみた。画面に表示される時間と日付。壁紙の男性アイドルが柚仁を真剣な眼差しで見つめている。
まだ、あの日から3日しか経っていないのか。
もっと長い時間が過ぎ去ってしまったような気がしていた。
芽衣は突然真剣な顔をすると、柚仁の顔を覗き込んだ。
「柚仁。悩んでたらいつでも話聞いてあげるからね。」
まるで心底心配しているような表情の芽衣を、柚仁は直視できなかった。
何を言う。お前が聞きたいのは私の「相談」なんかじゃない。私と透の別れ話だろうが。
柚仁はスマホの画面から目を離さずに、ありがとう、と微笑みながら言った。
まるで、心底感謝しているかのように。


