購買で買ったパンを頬張る。相変わらず味が薄い。
「じゃあ、染谷くんとは別れたの?」
期待の混じったなんともいえない表情で柚仁を見つめる2人の女生徒。唯香と芽衣は、一つの机を挟んで柚仁と向かい合い、同じく購買で買ったパンを貪っていた。
昼休みの教室は無駄に騒がしく、柚仁の苛立ちを増幅させる。
「別れてはない。」
柚仁は表情を変えずに言った。半分は意地である。確かに柚仁と透の状態は別れとも同様な気がするが、唯香と芽衣から見え隠れする期待を裏切ってやりたかったのだ。
「そうなんだ」
自分から聞いたくせにまるでどうでもいいような口調の唯香。
なに、その残念そうな表情は。早く別れればいいのに、心の声が今にも漏れそうだよ。
気づけば高校に入学してから、9ヶ月ほど経っていた。年も明けて寒さが厳しくなり、よく天気予報が雪が降る降ると騒いでいる。最近のことだったような入学式。偶然席が近くて、喋って、なんとなく一緒にいたこの2人。付き合いもそこそこ長くなってきたはずなのに、未だ心許せないのはなぜだろう。
2人に問題があるのか。それとも何か柚仁がいけないのか?
そんなことを思いながら柚仁は固いフランスパンを頬張る。ああ、味がない。


