偽りは、此れを恋と呼ぶ。



柚仁たちが引き受けたのは、一学年分のアンケートの集計である。

「こりゃ今日中には終わんねえなぁ」

透がアンケートの量を見て、嘆いた。
机に積み上げられた書類は確かに分厚く、めんどくさい仕事を引き受けたなぁと改めて思ってしまう。

「柚仁は演劇部なのに、いいの?」

「うん。しばらく公演ないから。」

「そっかそっか。じゃあ、締め切りまでにやればいいか。」

締め切りはこの週の金曜日だった。あと3日は残されている。

柚仁は透に下の名前で呼び捨てで呼ばれたことと、柚仁が演劇部所属ということを知っていたことに驚いたが、悪い気はしなかった。だから、柚仁も、とおる、と呼ぼうと決めた。

「さあて、やるか!」

透は教室の後ろの方の適当な席に座ったので、柚仁もその前の席に座った。

静かな教室に、書類をめくる音だけが響いていた。