偽りは、此れを恋と呼ぶ。



柚仁が初めて透に出会ったのは入学式の日。
初めて入った教室。新しい机と椅子。斜め前の席に透はいた。

第一印象は

怖いなぁ

だった。

ホームルームで順番に自己紹介をしていた時、透が教卓に立った時だけ、良くも悪くも異質な空気が流れたのを覚えている。

明るい声で、笑顔で、少し冗談を交えて笑いをとって、緊張の面影なんて見えない。大勢の初対面の人の前だというのに。

だからこそ、怖い、と思った。
きっとこういう人は、同じ教室にいても、自分とは違う世界で、楽しくスポットライトを浴びて生きていくんだろうなぁ。毎日息を潜めて、特に目立たぬよう生きている私とは違って。
きっとこういう人がクラス全体を掻き回していく。

それから、

綺麗だな

と。

何がって、容姿が、である。
ふわふわと茶色がかった髪に、切れ長の目、すっと通った鼻筋。
口元は、柚仁の好きなアイドルに似てるように思った。

美しく細い体の線は、少し弱々しくも見えた。

「よろしくお願いしまーす」

にっ、と笑って席に戻る透。
柚仁はその背中を静かに見つめていた。