2015年3月31日

 昨日の夜。
 萌の通夜は行われ、今日はお葬式がしめやかに行われた。

 瓜も桃も静かに涙をこぼした。
 まだ、5歳と4歳。

 母親に甘えたい盛りだと思う。

 ぎゅっと太郎の手を握り締め。
 じっと火葬場の煙を見ていた。

「お母さんが、天国に向かっているよ」

 太郎がそう言うと瓜が、うなずいた。
 沢山の人が、泣いている。

 萌は、昔からの友人も多い。
 だから沢山の人が葬儀に集まった。

 喫茶店の常連客から地方から来てくれた友人もいた。
 懐かしい顔ぶれ……

 俺が、死んだらこんなに人が集まるのかな?
 いや、集まらないだろう。

 十三は、そう思うとゆっくりと空を見上げた。
 ひこうき雲が静かに揺れる。
 それが、どこか切なく。
 どこか辛かった。

 葬儀が終わり、十三は黒いスーツのまま病院の庭に座り込んでいた。
 すると山本が、たこ焼きを持って来てくれた。

「大変だったね……」

「え?」

「萌さんのことだよ」

 山本は、そう言ってたこ焼きを十三にたこ焼きを渡した。

「ありがとうございます。
 萌ちゃんと知り合いだったんですか?」

「萌さんは、病院に入院するおじさん達のアイドルだったからね」

「そうなのですか……?」

「ああ。
 可愛いし愛想いいし、喫茶店の料金も安いし……
 文句なんて一つもない」

 山本さんは、そう言って小さく笑う。

「ですね……
 俺も、あそこのコーヒー好きです」

「ああ。
 コーヒーも美味しかったな……
 寂しくはなるけど、太郎君が頑張ってくれてる。
 俺は、萌ちゃんが居なくなってもあそこに通い続けるぞ」

「俺もです」

「さ、たこ焼き、冷めないうちに食べてくれ」

 山本は、そう言うとその場から離れた。

 十三はは、たこ焼きをひとつ頬張った。

 今日食べたたこ焼の味は少ししょっぱかった。