まっしろな遺書

 十三は、考えていた。
 歩のことを……
 そして、点滴の入れ替えに来た千代田に訪ねてみた。

「あの、歩ちゃんの様態は、どうなんですか?」

「ずっと眠っているわ……」

「そうですか……」

「様子見に行ってみる?」

「はい!」

 十三は、千代田に案内され無菌室へと向かった。
 ガラスの向こう側には、いろんな機会で繋がれた歩がいた。

「あの……
 貴方は……?」

 若い女性が、十三に声をかける。

「あ、えっと……
 詩空 十三っていいます」

 十三は、苦笑いを浮かべる。

「あ、もしかして歩が言っていた、頭の病気で入院している大きなお友達?」

「あ、たぶん、それ俺です」

「いつもお世話になっています」

 女性は、ゆっくりと頭を下げる。

「いえいえ、そんな大したことしてませんよ……
 で、歩ちゃんの様子は?」

「手術が終わってから、ずっとこの調子で……」

「そうですか……」

 十三は何を言えばいいかわからなかった。

  死なないでくれ。

 そう願うことしかできなかった。
 すると歩の目がゆっくりと開く。

「あ……」

 十三は、思わず声を上げる。
 歩は、十三の姿に気づくと口をパクパクと動かしている。

「俺、先生呼んできます!」

「あ、はい!」

 十三は、走った。
 走ったあとに気づく……

「どこに行けばいいんだ?」

 そんなことを思っていると一人の女医に呼び止められる。

「コラ!
 廊下を走っては、いけません!」

「あの……
 ここの先生ですか?」

 十三は、白衣を着ているということだけで医師だと判断した。

「そうですよ?」

「あの歩ちゃんが――」

 そこまで言いかけたとき十三は思った。
 担当医じゃなければ伝わらない。
 しかし、女医には伝わったようで……

「歩ちゃんに何かあったのですか?」

 女医の目が鋭くなる。

「歩ちゃんが目を覚ましました!」

「ホントですか?」

 十三は、その女医とともに歩がいる部屋に向かった。