まっしろな遺書

 2015年7月25日

 セミが鳴く。
 そんななか隼人の眼帯が外された。

 愛の茶色い目が、隼人の目になっていた。
 隼人の右目は黒い。

「このろうそくの火が、見える?」

 銘が、優しく言う。
 薄暗い部屋……
 そこにろうそくが一本立っている。

 静かな部屋、隼人はゆっくりとうなずく。

「見えるよ。
 視界が広がった感じ……」

「そう……
 手術は、成功したみたいね」

「うん」

「ふぅ……
 なんか、緊張した……」

 美穂が、ため息をつく。

「なんで、美穂が緊張するの……?」

「なんでって……
 うーん。なんでだろ?」

 美穂が、笑ってごまかす。

「まぁ、それは置いておいて隼人君。
 少し難しい話をするけどいいかな?」

 銘が、真面目な顔で隼人の方を見る。

「うん」

 隼人が、真剣な表情で頷く。

「隼人君の病状は、もう安定しているの。
 だから、隼人君はもうすぐ退院しなければいけない」

「うん」

「でも、隼人君の親戚は、みんな隼人君の受け入れを拒否している」

「うん、知ってる」

「そう……
 ごめんね、隼人君。
 貴方は施設に入ることになったの」

「そっか……」

「ちょっと待って!」

 美穂が、横から口を出す。

「美穂さん、何?」

「そんなの今言わなくてもいいじゃない?」

「話せるときに話しておかないと……」

「そうだけど……」

「遅かれ早かれいずれは病院を出なくちゃいけないの。
 病院も慈善事業でやっている訳じゃないからね……」

「だったら私が……」

 美穂が、そこまで言ったところで言葉を止めた。
 そう他人であるはずの美穂が引き取れるわけがない……
 残酷だが、これが現実なのだ。