まっしろな遺書

 2015年7月23日


 雨……。
 今日、愛のお葬式が行われた。
 左目には隼人とお揃いの眼帯が、つけられていた。

 隼人は、何も語らない。
 元太や瓜が、話しかけても何も答えない。
 桃は、ただ泣いている。

「なんだか、辛いね……」

 美穂が、そう言う。

「そうだね……」

「淋しいね……」

「うん」

 美穂も、あまり話さない。
 愛も小さいころから病院に居たため、病院以外での友達はいない。
 愛の両親は、愛が赤ちゃんのころ、愛を清輔に預けてどこかに行った。
 その後の行方は、わかっていない。
 今日の葬儀にも顔さえ出していない。

 愛が亡くなったことさえ知らないのだろう。
 愛ちゃんが病気であったことさえも知らないのだろう。

 十三は、そう考えると少しやるせない。

 泣かない隼人と泣き虫だった愛。

 ふたりの関係は、どんなものだったのか……
 それは、わからない。

 十三は、隼人のこともまだほとんど知らない。
 ただ愛と隼人の共通点は、両親がいないこと。

 隼人の場合は、無理心中して隼人だけ生き残ったらしい。
 それは、ずっと前に千春から聞いたことがある。

 きっと似た者同士のふたりは、惹かれあうものがあったのだろう。
 愛を乗せた霊柩車が、火葬場へと向かった。

 いつも思う。
 いつも切なく思う。
 霊柩車が、発射するときのクラクションの音が……。
 愛が、元気な時に使っていたお茶碗を割る瞬間。
 十三の心の中に雨が降る。

 泣きたくなるほど窮屈になる。

 生きるとは何か?
 死ぬとは何か?

 十三にそれはわからない。

 でも、この病院に来て思うことがあった。
 自ら死ぬということは、亡くなった人に対しての……
 生きたかった人への冒涜なのかも知れない……

 だから、十三は改めて思う。

  生きるって難しい。
  だから、人は死にたくなるんだ。
  死んだ先にあるものは何か?
  それは、悲しみと生きている間に何かできなかったのかと言う罪悪感のみ……
  俺は、まだ少し生きるよ。
  愛ちゃん、見守っていてね。

 十三は、小さくそう思うと空を見上げる。
 雨がしとしとと降る。
 雨が十三の目に入る。
 すると不思議と涙があふれた。

  なぁ、自由。
  なんで、俺、生きているのだろう?