まっしろな遺書

 2015年7月22日


 昨日の夜、隼人の左目の手術が行われた。
 愛が亡くなった後、隼人は清輔と希世に呼ばれた。
 そして、そのあとすぐに隼人の手術が行われた。
 愛が、自分が亡くなる前に清輔と希世にお願いしたそうだ。

「私が、死んだら私の目を隼人君にあげて」

 十三は、それを受け入れた清輔と希世は凄いと思った。
 それを聞いた隼人は、表情を変えなかった。
 喜怒哀楽、そもそも隼人にはそれが薄い。
 声に表情はあるものの。
 顔に表情はない。
 隼人が移植のことを嬉しかったのか悲しかったのかは、本人にしかわからない。

 手術が終わり、十三は隼人の会話する時間ができた。
 相変わらず左目に白い眼帯をしている。

「手術は成功したのかい?」

「そんなのまだ、わからないよ」

「そっか……」

「うん」

「愛ちゃんに感謝しないとね……」

「なんでかな?」

「え?」

 隼人が、うつむく。

「なんで、愛はあんなお願いをしたんだろう……
 僕は、愛の目なんていらなかった……
 愛さえそばに居て、生きてさえいれば……」

「そうだね……
 でも、きっと愛ちゃんは見たかったのだと思う」

「何を……?」

「隼人君の見る世界を……
 きっと愛ちゃんは、隼人君の目になって隼人君と一緒に世界を見たかったんだと思う」

「……僕は、僕の目になってほしくはなかった。
 僕の隣でずっと世界を見てほしかった」

「それが、一番だね……」

「おかしいんだ……
 愛が死んで悲しいのに涙が出ないんだ……」

「まぁ、そんなもんさ。
 悲しいから泣ける。
 そんな器用に生きていけたら人間苦労ないさ……」

「胸が苦しいんだ……
 つらいんだ……
 僕も愛のもとに行きたい……
 僕も死にたい……
 もう、ひとりはいやだ!」

 十三は、隼人の頭の上に軽く手を載せる。

「大丈夫。
 隼人君は、ひとりじゃないよ……」

「え?」

 隼人が目を丸くさせる。

「愛ちゃんが、ずっと隼人君の目になって傍に居る。
 隼人君の中で生きていくんだ。
 だから、『死にたい』なんて言ったらだめだよ」

 十三は、そう言ってニッコリと笑う。
 作り笑いだけど笑ってみた。

 隼人は、静かにうなずいた……