まっしろな遺書

 2015年7月21日

 今日、今日の朝、愛のウェディングドレスが仕上がり……
 ドレスはピッタリと愛の体のサイズに会っていた。

「綺麗だよ……」

 隼人が、照れ笑いを浮かべながら愛に言う。
 愛も恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる。

「隼人君もスーツ似あってるよ」

「ありがとう……」

 準備は、整った。
 愛はベッドの上でドレスを着てその隣で隼人が立つ。
 千春や千代田を含めた看護士さんたち。
 元太や瓜に桃を含めた子供たち。
 清輔や希世。
 そして、美穂に見守られながら結婚式が、始まった。

 十三が神父役をやることになった。
 静かな音楽が流れる中、十三は美穂が用意した聖書と言う名のカンニングペーパーを持って隼人に尋ねる。

「汝隼人は、この女、愛を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「誓います」

 隼人が、そう言う答える。
 十三は、愛に尋ねる。

「汝愛は、この男、隼人を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

 愛が、嬉しそうに答える。

「私、愛は、この男、隼人を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓います」

「では、誓いの口づけを……」

 と十三は、ここまで言って言葉を止める。

  子供にキスは、早すぎるんじゃないかな?
  自分だってキスなんて……

 十三は、そこまで思ったとき隼人は、愛の唇にキスをした。
 ほんの一瞬だけどキスをした。

「隼人君……」

 愛は、顔を真っ赤にして笑った。
 どこか愛の顔は、幸せそうだった。
 しかし、その表情はどこか苦しげで、機械音が鳴り響く。

 銘が、静かに愛の脈を図り様子を見る。
 それでも、愛は隼人と会話を続ける。
 苦しそうにつらそうに、でも幸せそうだった。
 愛が、精いっぱいの笑顔を作る。

「隼人君……」

「どうした?愛……」

「大好きだよ」

 愛ちゃんは、そう言ったあと、静かに行きを引き取った。

 現実はつらく、そして残酷だ……
 その場にいた、みんなが涙をこらえる。
 なぜならそのしあわせそうな愛の表情を見たら、涙を流すわけにはいかなかったからだ。

 暫くは、2人だけにしてあげようとことで、十三たちは静かに部屋を出た。
 愛ちゃんが今日1日持つかどうかわからない。
 それは、その場にいたみんながわかっていた。
 でも、つらかった。

 十三は、誰もいないところで呟く。

「ねぇ、神様。
 どうして死にたかった俺が、生き延びて……
 生きたかった愛ちゃんが死ななくちゃいけないんだろう?」

 その声は、虚しく誰にも届かなかった。