まっしろな遺書

 2015年7月13日

 十三は、気まずい空気のままゲームをする気にもなれず病院内を彷徨う。
 いつもと変わらぬ光景、いつもと変わらぬ風景に十三は心が少し痛む。

 いつも自分が能天気にゲームをしていた時でも、誰かが亡くなっている。

 でも、そういうのを何も考えず自殺した。
 未遂で済んだが死のうとしたことには、変わらない。
 ただ、この人たちと違うことはひとつある。
 あの時、自分が死んで悲しむ人は誰もいなかった。

 今、自分が死ねば、偽物の美穂は、悲しんでくれるだろう。

 久しぶりに再会した友人、太郎と小太郎も悲しむだろう。
 千春や千代田、あとゆかりの耳まで届けば悲しんでくれるかもしれない。

 だから、なんとしてでも生きなくちゃいけない。
 死ねば悲しむ人が少なからずいるのだから……

 十三は、ため息をつく。
 たどり着いた先は、待合室。
 山本とよくだべった場所だ。

 色んな相談を聞いてもらったし、たこ焼きも教えてもらった。
 正直、何かに自信をつけることなんてなかった。

 たこ焼きに関しては、美味しいと自信を持って言える。
 初めて自信を持った瞬間だった。

「ため息をつくと幸せが逃げちゃうよ」

 そう言って十三の隣に隼人が座る。

「授業はどうした?」

「授業なんて受ける気分になれないよ」

「そうか……」

「隼人君と愛ちゃんは、仲が良かったけど前からの知り合いだったのかい?」

「この病院に来て初めてできた友達だよ」

「そっか……」

「うん。
 家族が死んだとき、泣いている僕をずっと励ましてくれたのが愛なんだ。
 かっこわるいよね。女の子の前で涙を流すなんだ……」

「そんなことはないぞ。
 男の涙も武器だ!」

「でも、僕は決めたんだ。
 愛を守るために涙を流さないって……
 僕が泣けば愛も悲しむ。
 愛の悲しむ顔を見たくないから……」

「そうだな……
 隼人君は偉いな」

「偉くはないよ。
 ただのカッコつけたがりだよ」

「まぁ、いい……
 何か飲むか?ジュースを奢ってあげるよ」

「じゃ、僕は、紅茶がいいな」

「わかった」

 十三は、自販機でジュースを買った。
 隼人には紅茶を自分にはコーラを……