【短】愛したくて、愛せなくて…。



人をおぶって店に入ってくれば誰でも怪しむよな。


当たり前だけど。


でもそんなの気にしない。


案内されたのは店の奥にある4人座りの席だった。


ここなら外からも見えないし、人目を気にする必要がない。


雪華を壁側に座らせて、その向かいに俺が座る。


俺はマフラーを外してカバンと一緒に、隣の椅子の上に置く。


「腹減った~。お前もなんか食うだろ?」


メニューを開きながら俺が聞くと、雪華は首を横に振った。


「金は俺が出すからなんか食っとけ。その代わり約束しろ。メシ食ったら病院に戻るって」


雪華は返事の代わりに小さく頷く。


なんかいきなり大人しくなられると怖いんだけど…。


メニューを雪華の方に向けて顔を覗いた。


「ほら、何にするか決めろよ」


またコクりと頷いて、メニューに視線を向ける。


「これ…」


そう言って人差し指で指し示したのは、この店で一番安いサラダだった。


金のこと気にしてんのか?


あ、病院に戻れば食事が出るから食べなくてもいいのか?


「わりぃ。病院戻ればメシ出るよな。無理に食わなくてもいいや。飲み物だけ飲んで行こうぜ」