名前でからかわれるのが一番腹立つから無闇に名前は教えないことにしてる。
名前でいい思い出なんて1つもないからな。
きっとこいつだって笑うに決まってる。
「ズルいでしょ。教えなさいよ!」
「嫌だね!」
俺の答えを聞くなり、こいつ腕の力強めてきやがった。
「そっちこそズルいだろ!首絞めるなんて反則だろうが!」
「あんたが教えないからでしょ!」
さすがにこれ以上は俺がキツい。
諦めるしかなくて、俺は降参を告げた。
あっさりと腕の力を緩められて、やっと普通に呼吸が出来る。
顔は見えないけど後ろでニヤリと笑ってる気がする。
悔しい…。
なんで初対面の奴に名前教えなきゃなんねぇんだ…。
こいつ本当に病人か?!
めちゃめちゃ元気じゃねぇかよ!!
「早く早く!」
何も知らずに雪華は子供みたいに急かしてくる。
足を止めて、はぁ…とため息を1つ。
俺はゆっくりと口を開いた。
「レミオ…。お礼の“礼”に“澪”って書いて礼澪…」
笑われることを覚悟して目をキツく瞑った。
周りには足音が響き、俺たちの間には沈黙が流れる。


