「なによ…」
「裸足はキツいだろ。おぶってやるから乗れよ」
さっきまでの機嫌の悪さが、こいつのせいでどっかにいっちまった。
呆れるくらい可愛くない奴だけど、事情があるならしょうがないって思ってしまう俺も案外お人好しだな。
ブツブツ言いながらもそいつは背中に乗った。
肩よりも少し長い黒髪が俺の頬に触れる。
そう言えば女をおぶったの初めてかも。
カバンを持って立ち上がる。
背中から落とさないように両足をしっかりと腕で支えて、ゆっくりと歩き出した。
「しっかり掴まってろよ。あ、そう言えばお前名前は?」
「セツカ。“雪”に華やかの“華”って書いて雪華」
意外と素直に答えられて少し驚いた。
雪華か…。
今の時季にピッタリじゃん。
もう少し可愛いげがあればだけど。
「あんたは?」
突然耳元で話し掛けられてビックリした。
あんたって俺のことだよな?
「俺?」
「ほかに誰がいんのよ」
ぐぅ~~~、やっぱり可愛くねぇ!
「教えねぇ」
これは別に意地悪で言ってるわけじゃない。
自分の名前が嫌いだから人に知られたくないだけなんだ。


