目覚まし時計の音で目を開けると、カーテンの隙間から光が射し込んでいるのが見える。


体を起こしてみても、まだ完全に目覚めていない俺の体はダルい。


右手で両目を交互に擦っていると、コンコンとノックの音が聞こえた。


「入るわよ」


その声のあとに、ガチャッとドアが開き、お袋が顔を覗かせる。


「早くしなさい。遅刻するでしょ」


お袋に言われて、ため息をつきながらも、立ち上がって着替え始める。


「そうそう。今日は早く帰ってきてよ?お祝いしなくちゃ!」


「は?」


お袋が何言ってんのかわかんなくて、着替えながら俺は間抜けな声を出した。


「“は?”じゃないわよ。今日はあんたの誕生日じゃない。忘れたの?


まったく…この間から変よ?ずぶ濡れで帰ってきたりして…」


俺の誕生日…?


今日だっけ?


あの日、雪華と別れてからなんか変なんだ。


身が入らないと言うか、俺らしくないと言うか…。


とにかくボーッとしてることが増えた。


だから嫌いな誕生日でさえも忘れてたんだ。


あいつ…何やってんだろ…?


俺に言ったみたいなこと他の奴に言ったりしてないだろうな…。