【短】愛したくて、愛せなくて…。



そりゃ寒いよな。


もうじき雪が降るかも知れないって季節だしな。


俺は体力がないなりに必死に歩いた。


さすがに走るのは無理。


俺が倒れちまう。


こんなんだったら運動しとくんだった…。


なんて今更思っても遅いけど。


歩き続けて駅から出ると、空が曇ってた。


ポツポツと小雨も降ってる。


「…礼澪、ありがと」


「あ?何、急に」


口を開いたと思ったらいきなりお礼を言われた。


「ここでいいよ。降ろして?見ず知らずの私を助けてくれて、本当にありがとね」


「でも雨降ってんだぞ」


そんな俺の言葉も無視して、雪華は俺の背中から降りる。


「おいっ!ちょっ……!」


全部を言う前に、ブレザーの襟を引っ張られて、唇に何かが触れた。


触れたのはほんの一瞬。


俺は口元に手の甲を当てる。


何が触れたかなんてわかってる。


だから、顔は熱くなるばかりなんだ。


雪華は一度ニコリとすると、いつの間にか脱いでいた俺のコートを突っ返した。


そして裸足のまま、走っていく。


「雪華!」


名前を叫んで後を追いかける。