【短】愛したくて、愛せなくて…。



小刻みに振動して、まだ笑ってることがわかる。


「あんまり笑うと、ここから落とすぞ」


なんて本当はそんな気全然ないのに、悔しいからお返しのつもりで言ってやった。


階段から落ちたら怪我どころじゃ済まないかもしれない。


普通はやらないってわかってても謝るだろ?


「だったら落とされないように、しっかり掴まってなくちゃ!」


そう言って俺の首に巻いていた腕に力が入る。


おいおい!


「ちょっと待て!」


また首を絞められそうになって、俺は慌てて声を上げた。


俺の言葉ですぐに力は弱まる。


あっぶねぇ…。


この女を普通と思った俺がバカだった。


きっと今も背後で勝ち誇った顔してるに決まってる。


「ふっ」


って鼻で笑ったのが聞こえた。


やっぱりかわいくねぇ!!


なんで俺はこいつを一瞬でもかわいいなんて思ってしまったんだ?!


俺にとって最大の謎に違いない!


一度支え直して、また歩みを進める。


駅の通路は窓が閉まっているにも関わらず冷たい風が吹き抜けた。


雪華も寒さで身震いしたのか、その振動が俺に伝わってくる。