そんな風に生きてきた僕だが、ある日突然自分が世界の中心ではないことに気づいた。正確に言うと、「もう」だ。はっきりとした区切りはわからないが、彼、つまり世界の中心だった僕がそうではなくなってから2、3日は経っていたと思う。つまり、気づいたのはしばらくたってからだった。その時僕は、天気の良い休日で庭の掃除をしていた。季節は夏だ。僕はゆっくり流れる額の汗をタオルで拭いながら空を見上げた。そのようにして僕は世界の中心ではなくなった。だが、気づくのが2,3日後になるほどその時のことを忘れていた。少しだけ今は世界の中心は誰なんだろうと思ったが、すぐに誰でもいいとおもった。うちのばあさんでも誰も驚きはしねえな、と思った。そして、彼、現在の僕は世界の中心でなくなったことを除いて、何一つ変わらない生活を続けた。結局、彼にとって世界の中心だったことはクソの役にもたたなかったが、彼の人生の邪魔にもならなかった。ただ彼は76歳でこの世を去る4日前まで世界の中心だった。それだけは変えがたい事実である。かと言ってどうということもないが。