「あ…ごめん。つい条件反射で」

私の表情が幾分和らぐ。

…目の前の短髪の男子生徒は、鳩が豆鉄砲、って顔してたけど。

宮川修内太(シュナイダー)。

この変わった名前のクラスメイトが、この国で私が唯一心を許せる人間だ。

とある事件に巻き込まれ、私の落ち度で左目を失った彼に、私は片方の呪眼を移植。

その責任もあって、彼に『日常生活に支障を与えない程度の呪眼の扱い方』を教えた。

もっとも彼が意外に魔術の素質を持っていた為に、指導に熱がこもっちゃって必要以上の魔道の知識も教えてしまったりした訳だが。

「この間の胸の傷、どうだ?」

歩きながら修内太が言う。

「ん、もうだいぶよくなったわ。流石に普通の傷よりは時間かかったけどね」

「そうか、よかった」

他意のないニュートラルな修内太の言葉。

その言葉で彼が本心から心配してくれているのだとわかり、思わず笑みがこぼれる。

ついでに。

「あら…修内太は心配してくれてたんだ?」

思わずこういうからかいの言葉もかけてみたくなったりする。

「し、心配して悪いかっ、俺の落ち度でメグに怪我させたようなもんだからなっ」

予想通りの反応で動揺を見せる修内太。

うん、こいつは虐め甲斐があって楽しい。

…こいつに心を許せる理由。

それは、彼のこういう裏表のないところが。

「ふふ、いい奴ね、貴方のそういう所好きよ、修内太」

思ったままを口にすると、ずざざっ、と。

修内太は赤面して、大袈裟なくらい私から距離を置いた。