クリスは信じられないといった表情だった。

無理もない。

…人の世に伝わっている『魔女』とは。

人間に災いをもたらす者。

毒林檎、永遠の眠り。

命を奪い取り、毒薬で罪もない人々を亡き者にしようとする。

常に魔女の存在は『悪』であり、『魔性』なのだ。

故に教会、そしてエクソシストは魔女を異端者とし、その総力を挙げて殲滅しようとする。

悪魔に魂を売った邪悪な存在。

それが魔女。

クリスがそういう認識ならば、私の取った行動は理解に反するものだろう。

たかが一人の人間の為に、自らの命を危険に晒してまで禁呪を行使する。

今まで教会と異端者殲滅専門職が殲滅してきた魔女に、こんな例は一度もなかった筈だ。

「…お前は…本当に四門メグか…?…五年前に、僕に屈辱の敗北を与えた、あのデッドゲイトの魔女なのか…?」

我が目を疑うように、クリスが私に問いかける。

私はニヤリと笑った。

クリス達の認識通りの、邪悪で狡猾な笑みで。

「そうよ…私は四門メグ…メグ・デッドゲイト…六百年の時を生きる、稀代の魔女よ…」