洗面所で顔を洗い、完全に覚醒した後で紅茶を一杯飲む。

その後、学校の制服である紺のブレザーにチェックのスカートを身につける。

そろそろ寒くなってきた。

冬物、今度クローゼットから一度出して干しておかなきゃ。

そんな事を思いながら、私は家を出た。

玄関で立ち止まり。

「    」

現代人には聞き取れない神代の言葉で呪文詠唱。

これで玄関は勿論、全ての入り口、窓の鍵が施錠された。

下手なセキュリティよりも効果的な『施錠』の魔術。

迂闊に入ろう、こじ開けようとしようものなら、スタンガン並みの電撃を受ける事になる。

さてと、戸締まりも済んだし、学校へ行こう。

ヨーロッパからこの狭い日本に移り住んで、何百となく繰り返してきた朝の習慣。

老化すら止めてしまう『再生』の魔術によって、殺されない限り死ぬ事のなくなった私は、ほぼ永遠の時をこうして学業に費やさなければならなくなった。

一時期は死にたいとまで考えていたが…今はおかしな人間と知り合った事もあって、それなりに楽しい毎日を送っている。

まぁその人間のお陰で、それなりにハードなイベントもこなさなければならなくなったが。

まさか21世紀のこのご時勢に、竜退治をする羽目になるとは思いもしなかった。

ようやく塞がった胸の傷を軽く撫でた後、私は歩き始めた。