「とどめを?」

驚いたようにクリスが言う。

「ああ」

修内太は頷いた。

「今日まで俺はその魔女に騙されて、いいように利用されてきたんだ。少しぐらい俺にだって仕返しする権利はあるだろう?」

「修内太君」

クリスは首を横に振る。

「仕返しや復讐は何も生まない。復讐の為に四門メグを討っている僕が言うべき言葉ではないかもしれないが…君はもうこれ以上『こちらの世界』に関わるべきではない」

修内太に対しては、クリスは聖職者としての顔を見せた。

「悪い事は言わない。このまま帰りなさい。この魔女については、教会の方で処理する。君は何も心配しなくていい」

しかし。

「頼む」

修内太は引き下がらない。

「その女に一撃だけでもくれてやらなきゃ、俺の気が済まない。とどめとは言わないまでも、そいつに教わった魔術でそいつに痛みを味わわせてやりたい」

「……っ」

聞いていられなかった。

私はそこまで修内太に憎まれていたんだ…。

ならば。

「いいわ…」

かすれた声で私は言う。

「好きなようにやらせてあげて、クリス…死に行く者の最期の頼みよ…それくらいはきいてちょうだい…」