「……」

ベッドの中で覚醒する。

…やぁね、長生きしてると嫌な思い出も多くて。

横になったまま、天井を眺める。

…五年ほど前の事だったかしら、ヨーロッパの教会から派遣されてきたっていうあのエクソシストの坊やの相手をしてあげたのは…。

素質はあったんだろうけど、まぁ人間の力ならあの程度でしょうね。

私が『限定』の魔術で人間に傷を付けられないというハンデがあったとしても、デッドゲイト家がこれまで編み出してきた魔術の底はそんなに浅くない。

傷つけずとも退ける方法は幾つかある。

そのほんの一つで、あのクリスとかいうエクソシストは敗北を喫した訳だ。

随分プライドを傷つけられたみたいだけど、私にしてみればいい気味だ。

そもそも教会の言う『異端』とは、自らの宗派の信じる神以外のもの全てを指した事から始まっている。

平たく言えば、『うち以外は全て邪道』という事なのだ。

傲慢にも程がある。

ついでに理解の範疇を超えたものも『異端者』とし、ことごとく殲滅する。

そんな横暴な連中には、あのやり方でも手ぬるいくらいだ。

「お優しいメグさんに感謝なさい…ってね」

私はベッドから起き上がる。

たまたま昔の事を夢に見たくらいで、いつまでも考え込んではいられない。

この時代の四門メグは、優等生で通っているのだ。

遅刻など許されなかった。