この目の前にいる彼は、そのエクソシストの中でも期待のルーキー。

僅か二十歳にしてカトリック教会の公認を得た、世界に数百人しか存在しないエクソシストの中の一人なのだ。

とはいえ、エクソシストとてピンからキリまで存在する。

素質はあるのだろうが実戦経験に乏しいこの男は、六百年から生きる稀代の魔女、このメグ・デッドゲイト…今は四門メグだが…の足元にも及ばなかった。

「よかったわね、私が人間には傷一つつけられない魔女で」

無防備に男に背を向ける。

恐怖ですくみ上がっているこの男には最早何も出来ないし、仮に出来たとしても返り討ちにしてやれる。

私の自信の表れだった。

それをわかっているからこそ。

「魔女!」

男は再び強く降り始めた雨の中、叫んだ。

「クリスチャーノ・レオンフィールドだ!」

「……」

私は立ち止まり、ゆっくりと振り向く。

「僕の名前…そしてお前を滅ぼす者の名前だ。この名を覚えておけ」

恐怖に支配されながらも力強さを失わないその瞳。

フン、人間にしてはいい眼をするじゃない…。

「いいわ、覚えておいてあげる。またいらっしゃい、坊や…」

その青年…クリスの怒りの咆哮と雨音の中、私は外人墓地を後にした。