魔女の瞳Ⅱ

ヘルハウンドをたった一撃で。

「くっ」

私はすぐに別の魔物を召喚しようとするが。

「そんな時間は与えはしない」

私が召喚に集中しようとした一瞬の隙に、クリスは間合いを詰めてきた。

そして遠心力を乗せた後ろ回し蹴り!!

「がはっ!!」

障壁に魔力を注ぎ、咄嗟に防御姿勢をとったものの、私の体はその蹴りの威力に吹き飛ばされてボールのように地面を跳ねた。

…格闘戦では分が悪い。

私も多少は体術に心得はあるものの、クリスは更にその上をいっている。

やっぱり魔術戦闘に持ち込むしかないけど…。

立ち上がりながらも、私は歯噛みした。

クリスを傷つけずに殺傷系の魔術で倒す方法…。

難しいけど、直接当てずにその威力だけで気絶させるとか、そういう方法を取るしかない。

…余裕の表情で、ゆっくりと歩み寄ってくるクリス。

彼に対し。

「            !!」

私は高速詠唱した。

イメージしたのは黒雲、そして落雷。

かざした私の右掌から、轟音と共に凄まじい電撃が放出される!!

『雷』の魔術。

放たれた電撃はクリス本人ではなく、彼の目の前の地面に直撃し、大爆発を起こす!!

その爆発と衝撃で、クリスを気絶させようという作戦だったのだが。

「…随分とお粗末だね」

そんな落ち着いた声と共に。

クリスは何事もなかったかのように爆煙の中から左手をかざして歩み出てきた。

その掌には、『盾』を意味する祓魔の印。

彼は『盾』によって爆発と衝撃を完全に防いだのだ。