魔女の瞳Ⅱ

「さぁ、おいで」

私の呼びかけに応えて、魔方陣から黒い獣が首をもたげる。

それは、赤い瞳に鋭い牙を持つ、犬とも狼ともとれる獣だった。

ヘルハウンド。

イギリスの伝説に出てくる魔物で、ブラックドッグとも呼ばれる。

遭遇した者に死を運ぶといわれる凶暴な魔物。

「呪眼を使った簡易のヤッツケ召喚魔法じゃ一頭が限度か」

ボヤキつつも、とりあえずよしとする事にした。

私はクリスを指差し、ヘルハウンドに命じる。

「ほら、行きなさい。あの坊やが遊んでくれるってよ?」

途端に。

身震いするような咆哮を上げ、ヘルハウンドはクリスに襲い掛かった!

私自身は人間に傷を付ける事は出来ないけれど、『私が召喚したもの』が攻撃を加えるのならば話は別だ。

私の命令を忠実に守る暗黒の獣は、この世界に存在するどんな獣よりも敏捷な動きでクリスの身に踊りかかった!!