立ち上がって身構える。

これだけ派手に暴れているというのに、誰も気づかないというのは不自然だった。

「周囲1キロに人払いの結界と防音結界を張っておいた。遠慮なく抵抗するといい」

クリスは再び突進してくる!!

「お前の死は絶対だがな!!」

手刀を横薙ぎ、袈裟懸けに振るい、私を両断しようとするクリス。

彼の指先が制服の胸元に触れただけで、襟元を結んでいたリボンが千切れ飛んだ。

私だって『強化』の魔術で身体能力を向上させているのに、それでも紙一重でかわすのが精一杯だなんて…!!

「くっ!!」

苦し紛れにもう一度『睡魔』の魔術を呪眼から放つ。

本来ならばどんなに抗おうと強制的な睡眠に陥ってしまう筈のその魔術は。

「無駄だ」

クリスの瞳術封じによってあえなく遮断される。

駄目だ。

やはり精神干渉系の魔術は通じない。

ならば。

私は後方に大きく跳躍し、クリスと距離をとった。

「どうした?」

クリスが立ち止まる。

「わかっていると思うが、逃げられはしないぞ?今日こそは完全にお前の息の根を止める。お前の死体を確認するまで、地の果てまで追い続けるぞ」

「逃げやしないわよ」

大きく深呼吸して、私は呪眼に魔力を注ぎ込んだ。

契約、必要な生贄、その他諸々を呪眼の効果で省略する。

同時に。

「!」

私の足元のアスファルトに、紫色の光を放つ魔方陣が浮かび上がった!!