私は言葉を失ったまま、去っていく修内太の背中を見送る。

「これで彼はお前の呪縛から離れた訳だ」

平然と言ってのけるクリス。

「貴方…!」

私は右の呪眼で、その憎きエクソシストを睨んだ。

「睨むのは筋違いだろう、四門メグ」

クリスは逆に私を見据える。

「お前が真に彼を想い、戦いに巻き込みたくないというのならば好都合なのではないか?僕に感謝こそすれ、睨まれる謂れはない」

…確かにその通りだ。

私は修内太を魔道に引き込むつもりはなかった。

となると、これはいいきっかけになったのではないか。

幸い、既に呪眼の制御の仕方は教え込んでいる。

後は彼一人でも大丈夫だ。

私がわざわざ側についている必要はないのかもしれない。

クリスが呪眼や魔術に適応するように改善した修内太の肉体を浄化してやるのもいい。

そうすれば彼は、元の一般人に戻れる。

私が関わる理由はどこにもなくなるのだ。

しかし…。

何だろう、この胸に去来する寂しさは。

今までだって一人でやってきたというのに。

人間には何の期待もしていないし、むしろ嫌悪さえ抱いていたというのに。

何故修内太が離れていく事に、こんなに虚しさを覚えるのだろう…。