「あら」

私は嘲笑うかのように男を見下ろす。

「まだ逃げ出さずにいられるのね。流石は教会の秘蔵っ子、大した精神力だわ」

「く…」

悔しげに息を吐き出した後、男はゆっくりと立ち上がる。

…膝が震えていた。

恐怖と戦慄で、体が言う事を聞かない筈だ。

「雨が降っててよかったわね…これなら恐れおののいて失禁してたってわかりっこないもの」

彼は私が最も嫌悪する種類の人間だ。

侮辱の言葉も最上級のものをチョイスしてやる。

その言葉に。

「いい気になるなよ、忌々しい魔女め…!!」

恐怖を押し殺すかのように、男はギリ、と歯噛みした。

「魔女狩りの時代から、貴様達魔道の探求者は我々祓魔師(ふつまし)によって殲滅される運命にあるのだ。今回逃げ延びられたからといって助かったと思うな…!」

祓魔師。

魔女、悪魔、悪霊、魔物…。

この世界に存在する魔性の者…ひと括りに『異端者』と呼ばれているが…それらを排除する為の、教会の異端者殲滅専門職。

私達異端者側からすれば、『エクソシスト』の方が通りがよかった。