魔女の瞳Ⅱ

呪眼から放たれた魔力の迸りは、しかし。

「!?」

クリスにその効果を与える直前で、パチンと音を立てて無力化する。

「な…」

驚愕する私。

余裕の笑みを浮かべるクリス。

だったら、とばかりに今度は『畏怖』の魔術を行使するも。

「っ!」

やはり結果は同様だった。

…私とて魔女だ。

二度も試せばすぐに種はわかる。

「その眼鏡…魔術品ね…?」

私はクリスのかけている眼鏡を睨んだ。

…魔術品とは、その名の通り魔術によって特定の効果を持たせた特別な道具の事だ。

「この眼鏡…『瞳術封じ(どうじゅつふうじ)』というものだよ」

クリスは笑みを浮かべた。

…古くは神話の時代の魔物であるメデューサの石化の瞳をはじめとして、呪眼、魔眼といった特殊な効果を与える瞳を使った術を『瞳術』という。

クリスのかけているあの眼鏡は、それら瞳術全般の効果を封じる力を持つ魔術品なのだ。

といっても恐らく封じる事ができるのは精神干渉系の魔術や、目を合わせる事で効果を発揮する類の瞳術のみ。

「それでもメグ、君には厄介なシロモノだろう?」

「……」

クリスの言う通りだった。

私は『限定』の魔術の効果で、人間を傷つける事は出来ない。

だからこそ精神干渉系の魔術でクリスを退けようと考えていたのだが…。

「面倒なもの持ってきたわね」

私は舌打ちした。