住宅街が立ち並ぶ通りを歩く。

…まるで全ての家々が留守にしているかのように、人の気配は勿論、物音すら聞こえない。

まるで時間が止まったかのような光景。

この近隣の住民は一体どこへ行ってしまったのか。

「まさか近くで不発弾騒ぎでもあって、みんな避難でもしたとか…」

修内太もいよいよこの状況が異常だと感じ始めたらしい。

ゴーストタウンと化した住宅街をひたすらに歩く。

この手の異常は、私でも作り出そうと思えば作れる。

人払いの結界。

ある範囲内に、人間が寄り付かなくなるような魔術を施した結界を張るのだ。

具体的には『そちらの方向には行きたくなくなるような気分』にさせる魔術を施した結界。

一種の精神干渉系の魔術だ。

だが、この近辺に魔道の匂いは感じられない。

という事は、この異常は魔術によるものではないという事。

ならばこの異常は誰の仕業なのか。

…実は人払いの結界というのは、元祖は魔術ではない。

人払いの結界を編み出したのは、異端者殲滅の際に一般人に被害が及ぶ事を恐れた教会側が編み出した術なのだ。

つまりこの異常は…。