深夜の外人墓地。

夜半過ぎから降り出した激しい雨は、明け方になって小降りになった。

降りしきる雨は十字架を象った墓石に雫を滴らせ、地面に水溜まりを作った。

その雨の中、私は立っている。

ポニーテールは雨に濡れて重さを増し、ダラリと垂れ下がっている。

夏服のセーラー服もびしょ濡れで、肌に貼り付いていた。

…そんな私の目の前に跪くのは、一人の男。

襟足の長い金の髪を後ろで束ねた、修道服姿の青年だった。

体は小刻みに震えている。

この梅雨の時期に、寒いという事はないだろう。

震えているのは気温とは別の理由だった。

『畏怖』。

魔性の瞳、呪眼に蓄積された膨大な魔術の中の一つ。

相手の精神に干渉し、誰もが心の内に隠し持つ恐怖の扉を少しだけ開けてやる。

そうする事で、相手の精神は恐れに満たされるのだ。

並みの精神の持ち主ならば、三日三晩はその恐怖に魘される。

しかしこの男は。

「四門…メグ…!!」

震える唇で、呪詛のように私の名前を紡ぎだした。