正面から会いに行っても断られてしまうなら…こっそり忍び込んでしまえと。

高い樹と、伝う蔦を登って、セレイアはヴァルクスの部屋のバルコニーに忍び入ったのだった。

自分でもとんでもないことをしたと思う。

危ないなんてものではない。落ちたら死んでしまうところだった。

だからだろう。

部屋の主たるヴァルクスの驚愕は、半端なものではなかった。

しかもその日は暖かい日で、大雨が降っていた。

全身びしょぬれで部屋の窓を叩くセレイアを、ヴァルクスはとりあえず中に入れたが、しばらく絶句したままだった。

「お前…な、なんで…」

「なんではこっちの台詞よ!」

セレイアはヴァルクスに掴みかかった。

「どうして私を避けるの? 何か嫌いになる理由があったなら、ちゃんと言ってくれなきゃ、わからないわ!」

言っているうちに不覚にも涙が溢れてきた。

久々に見るヴァルクスの姿に安堵したのと、嫌われて悔しくて悲しいのとで、涙は止まらなかった。

ヴァルクスはうろたえ、言葉に迷うように視線をさまよわせる。

そしてセレイアの涙を指でぬぐった。