「プミールは花が好きだ。
でも残念ながら今日は持ち合わせがないな…何かやりたいんだが」

「ええっと、待ってね」

セレイアはふと思い立って懐をまさぐってみた。

すると、出てきたのは―

「砂糖菓子。お花の形をしているから、もしかしたら食べるんじゃないかしら」

「砂糖菓子ぃ? いくら形は花だからって、そんなもの食べるわけが…」

ヴァルクスが即セレイアの案を却下しようとした時、プミラがらんらんと瞳を輝かせてセレイアの持つ砂糖菓子に鼻を寄せた。

「え…プミラ?」

あっけにとられるヴァルクスの前で、プミラは嬉しそうに砂糖菓子を平らげてしまった。

もっともっとと、セレイアに鼻を寄せてせがんでいる。

「この子、砂糖菓子が好きなのね! かわいい!」

「あとで腹を壊さないといいが…」

プミラの砂糖菓子好きは、この時に始まったのだった。

二人はプミラに乗って、街中を駆け回って遊んだ。

真っ白に光輝く街。

街の人々は幼い二人をいつもにこやかに受け入れてくれた。

街を見はるかす雪の丘に二人並んで座って、語り合った。

「この国は……きれいだな」

「ええ」

二人の瞳の中で、小さく見える街が光を浴びてきらきらと輝く。

「俺は…この国が好きだ。父上たちが守るこの国を、俺も守っていきたい。そのためにできることがあるなら、努力は惜しまないつもりだ」

「ヴァルクス! それ、私もよ! 私もこの国と、この国の人々を守っていきたいの。私を育ててくれたこの国に、力いっぱい、恩返しをしたいの」

「…そうか」

そう言ってぽんと優しく頭を撫でてくれたヴァルクスの、この上もなく優しい目を、セレイアは忘れることがないだろう。