物心ついた時には、セレイアは両親を知らず孤児院で生活していた。

それが国によって運営されていること、国王様と、予言を聞く姫巫女様の力でその国が成り立っていることを、孤児院では幼い頃から徹底的に教わった。

だから幼いながらに、セレイアは思っていた。

自分は両親が行方不明で親戚もわからぬため、他国であれば野垂れ死ぬしかなかったのだという。

そんな自分を助けてくれた国に、何か恩返しがしたい、と。

そしてその機会はあまりにも早く彼女に訪れた。

当時の姫巫女ハルキュオネが国王の弟ディラックと結婚をすることになった。予言を聞く力は、結婚と同時に失われる。それゆえ次代の姫巫女を決める試験が国中で行われることとなったのだ。

試験は全家庭に配られる専用紙に、神の予言を聞いた者だけがそれを書き綴って提出するというものだ。それは計三回行われ、現姫巫女たるハルキュオネと同等レベルの予言を聞くことができた者の中から、次代の姫巫女が選ばれるのだ。

そして幼いセレイアは、その試験で群を抜く成績を見せた。ハルキュオネでさえ聞き取れぬ部分を、習いたての幼い字で、明確に示したのだ。

いまだ幼い少女ではあったが、珍しいことではないし、結婚と同時に姫巫女職を辞し大巫女となるのが普通なので、姫巫女は若いに越したことは無い。そう国は判断し、セレイアは姫巫女に大抜擢されることとなった。