思い出す。

彼と約束した日のことを。

それは大切な大切な、…約束だった。



「子供が欲しいんだ」

セレイアが14の誕生日を迎えた時、ヴァルクスは真剣な瞳で語った。

いつも割と茶化したりふざけている彼にしては珍しいと思った。

「俺には兄妹もいないし…母も、俺を産んだ時に亡くなっているから、家庭と言うものがどういうものかよくわからないんだが。
あたたかい家庭をつくってみたい。
だから俺の子を…産んでくれないか」

心なしか彼の顔が赤い。

その照れくさそうな顔を、セレイアは愛しいと思った。

と同時に、セレイアは彼の何倍も照れてしまう自分をおさえられなかった。なんといっても、話の内容が内容だ。

「い、今すぐとか言わないでしょうね?」

おずおずと返すと、ヴァルクスは即答した。

「今すぐ」

「えっ!」

「…と、言いたいところだが、まだお前は子供だ。
もう少し待つつもりでいる」

そう言われてセレイアはほっとした。

ちょっと残念なような気もしたが。乙女心は複雑である。

「わかった。約束するわ。
いつかあなたの子を産む」

「本当か!?」

「本当の本当。私は約束を違えたりしないわ。
女の子がいいわね」

セレイアがうっとりとそう言うと、ヴァルクスが猛反対した。

「男の子がいい!」

セレイアもむきになる。

「女の子よ!」

「男!」

「女!」

ぷっと噴き出したのは、どちらが先だったろう。

二人は声をそろえて笑った。