こんな激しい口調も表情も、はじめてだ。

何が彼女をそうさせるのか、尋ねてみようと口を開きかけると、急にセレイアが表情を取り繕ったのがわかった。

表面上だけうっすらと微笑んで、セレイアはことさらに普段通りを装った声で言う。

「遠征先になんて…行ったら仕事の邪魔になるわ」

ただそれだけのことに、ああも激しい口調で反対するものだろうか。

「困ったわね…。実をいうとヴァルクスは時々、私に会いに帰ってきているから、本当は会わせられないってことは、ないんだけど…。
やめておいた方がいいと思うわよ?
とんでもなく横柄で、自分勝手で、わがままな奴なんだから」

「…………」

あ、まただとディセルは思う。

セレイアの話に、違和感を感じたのだ。

ハルキュオネと話した時と同じ違和感…。

ひょっとすると、これは、気のせいではないのかもしれない。

まさか…。

いやそんなはずは。

でもまさか…。

それから数週間、ディセルはあるとんでもない仮定を元に、独自に調査を進めてみた。

そして、…

ある結論に、至ったのだった。