しかし今の会話に、ディセルは何か違和感を覚えて仕方がなかった。

それは、ヴァルクス王子がわがままで横柄だという話が、イメージと違ったから、ただそれだけだろうか。

もっと大事な何かを、見落としている気がする。

けれどそれがなんなのか、うまく言葉にできない。

とにかく、とディセルは気持ちを引き締めた。

これ以上のことを知りたければ、あとは本人に会って直接確かめるしかなさそうだ。

ディセルは屋敷でセレイアの帰りを待ち、夕食後の時間をねらって声をかけた。

「セレイア、ヴァルクス王太子殿下には、どうやったら取り次いでもらえる?
遠征先のアイリアっていう国に、行ってみようと思っているんだけど…」

セレイアは目を丸くした。

「遠征先に…行く?
ディセルが?」

「うん」

頷くと、セレイアの表情ががらりと変わった。

それは恐怖や怯えに近い感情を思わせる表情だった。

「やめて!!」

頬をひきつらせ、強い口調でそう言うセレイアに、ディセルは驚いた。