謁見室と書かれたプレートを見て、ディセルはごくりと唾を飲みこんだ。

ハルキュオネが普段セレイアと接する厳しい様子を知っているので、緊張してしまう。

ノックをし、「失礼します」と入室すると、ハルキュオネの、予想通りの厳しい顔つきがディセルを待っていた。

それでも怯んではいられない。

「あの…」

話しだそうとすると、「まずはお掛け下さい」と着席を促された。

謁見室は想像していたよりも小さかったが、家具調度は落ち着きのある深い色合いの赤で統一されており、ハルキュオネの持つ厳粛な雰囲気とぴったり合っていた。ディセルはハルキュオネの向かいの席に、とりあえず腰を下ろした。

「大前提としてお話させていただきますけれど」

着席するなり、ハルキュオネが不機嫌そうな声で切り出した。

「私はあの娘のいうことを鵜呑みにしたわけではございませぬ。
ゆえにあなたのことを神人だとは思っておりません。
ただ、完全に神人でないと思ったわけでもございませぬゆえ、仕方なくこういった席を設けました。
大事な用件でないなら今すぐお帰り下さい」

冷たい口調に、ディセルは我知らず首を縮めそうになった。

―やっぱり、厳しい方みたいだ。

だが、セレイアにとっては母親代わりのような人だと聞いた。

きっとセレイアへの愛情は人一倍あるに違いないと思う。

あの娘と言う時に、少しだけ口調がやわらいだ気がするからだ。

セレイアに関わる大事な話だ。何度も言うようだが、怯んではいられないのだ。