「何を祈っていたの?」

「何、か…。自分でもよく…わからないの…ただ、祈りたくなって、それで…」

「それで…?」

「ううん、なんでもないわ。
冷えるわよ、もう、帰りましょう」

そう言って踵を返す彼女に、ディセルは何も言うことができなかった。

普段気丈な彼女を知っているだけに、脆い一面を垣間見た今、胸がさざなみのように揺れている。

強い引力を感じるのだ。

もっともっと、彼女の色んな面を知りたくなる。

―だめだ、とディセルは思った。

完全に、落ちてしまっている。

どんどん好きになってしまう。自分でも止められない。

彼女の涙の理由はきっと、行方不明の両親のことか、彼女自身の予言を聞く能力のことだろう。

自分にできることはないだろうか。

セレイアを悲しませるものならなんでも、とりのぞいてあげたいのだ。

ディセルはその想いを胸に、セレイアの背中を追ったのだった。